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子育てをしていると、子どもの性についての話題を耳にすることがありますよね。
しかし、いまの親世代で、自分自身がきちんと性教育を受けたと思える人は少ないのではないでしょうか。
そのため、性教育と聞くと、なんとなく伝え方に自信がない、話題を避けがちなど、尻込みしてしまう人も多いようです。
そこで、今回は一般社団法人“人間と性”教育研究協議会の「乳幼児の性と性教育サークル」代表・北山ひと美さんへの取材をもとに、学校での性教育の現状や、家庭での性教育のあり方について解説。
あわせて、edimo編集部おすすめの絵本や書籍を、子どもの年齢別に紹介します。
取材・監修協力※商品紹介部分は取材・監修範囲外です
教育者
北山 ひと美
一般社団法人“人間と性”教育研究協議会(性教協)幹事。性教協 乳幼児の性と性教育サークル代表。前和光小学校・和光幼稚園校園長。
42年間、和光学園にて保育、教育に携わる。2014年から2023年3月末まで和光小学校・幼稚園の校園長を務めた。20年あまり前から性教協会員、幹事として性教育の研究、実践を重ねる。性教育に関する書籍や、NHKのEテレ「アイラブみー」などの番組の監修も行う。
一般社団法人“人間と性”教育研究協議会
https://www.seikyokyo.org/index.html
性教協 乳幼児の性と性教育サークル
https://uuappeal-2015.wixsite.com/mysite
目次
現在、学校ではどのように性教育に取り組んでいるのでしょうか。
小学校5年生理科の「動物の誕生」の単元では、動物の発生や成長について「魚を育てたり人の発生についての資料を活用したりする中で卵や胎児の様子に着目して学ぶ」となっています。
しかし、2017年および2018年に文部科学省が告示した新学習指導要領では、「人の受精に至る過程は取り扱わないものとする」という、いわゆる“はどめ規定”が明記されたままです。
中学校1年の保健体育ではもう少し踏み込んだ内容になっているものの、新学習指導要領に「妊娠の経過は取り扱わないものとする」と記載されていることから、避妊・中絶については学習せず、女子に対する初経・月経指導にとどまっているのが現状と考えられます。
また、日本では長年、性交について学校教育で取り扱わないにも関わらず、刑法において性交同意年齢は13歳とされてきました。
2023年2月、性犯罪から子どもを守ることを目的に、性交同意年齢を13歳から16歳に引き上げる刑法性犯罪の変更の答申が法務省の法制審議会から提出されましたが、新学習指導要領はそのまま。
中学校で性交について学ばないことは、やはり性教育として不十分といえるでしょう。
一方で、性教育の教育研究団体などを中心に、2009年にユネスコなどが示した『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(2018年改訂) に基づく包括的性教育を進めようと頑張っている学校、教員たちもいます。
包括的性教育とは、性(セクシュアリティ)を、からだとこころ、人間関係、社会とのつながりなど、 いろいろな角度から幅広く学ぶ教育として捉え、 知識を学ぶだけではなく、物事の考え方や感じ方の幅が広がる学びとして考える、というものです。
【監修者】教育者北山 ひと美のコメント
欧米など、以前から学校教育の中に性教育を位置付けてきている国もあります。
また、『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』が出されてからは、多くの国が包括的性教育に取り組み始めています。
一方、日本では“はどめ規定”に象徴されるように、性教育がきちんと教育の中に位置付けられていないのが現状です。
また、国連子どもの権利委員会からは「思春期の女子および男子を対象とした性と生殖に関する教育が学校の必修カリキュラムの一部として一貫して実施されることを確保すること」と勧告(2019年度) が出されているように、今も十分に学校教育の中に位置付けられているとはいえません。
ただ、「性の多様性」についての認識が広がったり、性暴力を許さないという動きが起こったりと、ひと昔前とは社会的な状況が明らかに変化しており、性や性教育に対する受け止め方が変化しつつあるのも事実です。
包括的性教育は生活の中で身に付ける内容も多く、家庭の中でどのような言葉かけが行われるかということは、子どもにとって大きな影響があります。
とはいえ、十分な性教育を受けてきていないという保護者も多いので、まずは大人が学ぶことが大切です。
ベストセラーになった『おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯、SEX、命の伝え方』『おうち性教育はじめます 思春期と家族編』(ともにフクチマミ、村瀬幸浩著/ KADOKAWA)など、保護者として子どもの性教育にどのように向き合えばいいか、参考になる書籍が出版されていますので、手に取ってみてください。
子どもに「性」をどのように伝えるかは悩みどころ。
年齢によって伝えてもいい内容と、伝えるのが難しい内容があります。
まずは、幼児期から子どもが疑問に思うこと、知りたいと思う気持ちを受け止め、その気持ちに応えていくような関係作りが大前提となります。
思春期を迎える頃になると、異性の親からからだや性にまつわる話を聞くのは子どもの方にも抵抗が出てきます。
そのため、初経や精通などについては、同性の親やそれに代わる人が話してあげることが望ましいでしょう。
そして、異性の子どもからは少しずつ距離を置くようにし、自立に向かって成長する姿をサポートしていくのが親の役割となります。
【監修者】教育者北山 ひと美のコメント
性に関する質問は、子どもにいきなり尋ねられて、すぐには話ができないシーンもありますよね。
その時もごまかしたり嘘をついたりすることなく、「大切なことだからあとでゆっくりお話ししようね」と言って、準備をしてから話をしてあげることが大切です。
子どもが、自分が生まれてきたことや小さい頃の話を親に聞きたがるのは、科学的に知りたいという以上に親子の絆を確かめたいという思いもあるのではないでしょうか。
その証拠に、大きくなっても幼い頃の話を聞くとき、子どもは本当に幸せそうな顔をしているものですよ。
子どもたちがからだのこと、性のことを知りたいと思うのは自然なことで、そこに応えていくことができるように、大人が心構えをしておくことが大切です。
「そんなこと聞くものではない」というようなメッセージを送ると、性は話題にしてはいけないことだと思ってしまい、疑問を投げかけることができなくなってしまうかもしれません。
今はネットで検索すると様々な情報を得ることができますが、必ずしも正しい情報ばかりとは限りません。
家庭の中で温かく柔らかな関係を育みながら、子どもが知りたいことに向き合っていけるような大人でいられるといいですね。
まず、乳幼児期のトイレトレーニングの際に、性器の違いによる排せつの仕方、排せつ後の拭き方などを丁寧に教えましょう。
そして実は忘れがちなのが、きれいに拭けているかどうか見てあげなければならないとしても、大人が一度はトイレのドアを閉めることです。
そうすることで、トイレがプライベートな空間であるということを子どもに伝えることになるからです。
立ってお風呂に入ることができるようになれば、スポンジに石けんを泡立て、いわゆるプライベートパーツである性器、お尻と胸は自分で洗うように教えます。
最初は的外れなところを洗うかもしれませんし、仕上げに洗ってあげなければならないのですが、プライベートパーツは“自分だけが見たり触ったりしていいところ”というメッセージを伝えましょう。
このように、改まって何かを教えるというよりは、小さいうちから“自分のからだは自分だけのもの”“自分のからだをどうするかは自分が決める”というメッセージを日常生活の中で伝え続け、たとえ親であっても子どものからだの権利を侵害してはならないということを大人が十分に理解しておくことが、何よりも大切です。
そして、“男だから”“女だから”というジェンダーバイアスを否定し、家庭の中で性別役割分業を行わない、そのような生活を送ることが、子どもたちへの大切なメッセージとなります。
いくつになったら何を教える、というよりは、子どもに関わる大人が「人権」を意識した生活を送ることができているかどうかということが最も大切なことなのです。
子どもの素朴な疑問に、親はどう答えればいいか迷ってしまうこともありますよね。
ここでは、Q&A方式でケース別の対応法について解説します。
Q:「赤ちゃんはどこから来るの?」と質問されたけど、答えられなかった。
A:子どもの年齢に合わせて説明の仕方は変わってきますが、基本的には「女の人が持っている卵子と、男の人の持っている精子が合体して受精卵(小さな子どもの場合「いのちの素」と説明してもよい)となり、女の人のお腹の中で成長します。
そして、女の人の膣口(赤ちゃんが生まれる穴)から生まれてくる。場合によってはお腹を切って生まれることもある」といったところでしょうか。
もう少し詳しく説明するのであれば、性交についても「男の人のペニスを女の人のワギナに入れ、精子を送り届ける」と伝えます。
Q:「なぜ男の子と女の子の性器は形が違うの?」と聞かれたが、うまく説明ができない。
A:性腺原器のことを伝えてもいいかもしれません。
「男の子と女の子の性器は、もともとは同じものだったが、ホルモンの影響で女性器と男性器に分かれる。
性器の形が違うのは、男性器で精子を女性のワギナに送り届けることができるようになっているから」と伝えると分かりやすいでしょう。
Q:子どもがスマホでアダルトサイトを見ているのに気付いたけど、なんて言う?
A:ネットは便利な反面、思わぬ危険性があることをしっかり教える必要があります。
「アダルトサイトは、男性が射精するために都合よく作られた、虚偽の内容であるものがほとんどであること」を伝えましょう。
なかには暴力的な内容も含まれ、男性、女性のことが間違って刷り込まれてしまう可能性があります。
そういう内容であることをわかった上で見るのと、セックスとはこういうものだと思い込んで見るのとでは、この先の大切な人との関係の作り方に大きく影響してきます。
Q:子どもがどうやらセックスを経験している様子。妊娠について、どう伝える?
A:妊娠については、まさに生殖について正しい知識をしっかりと学ぶ必要があります。
しかし、性交経験がある子どもに対して親が伝えることには限界があるでしょう。
このような内容こそ、学校教育で避妊や性感染症の知識として伝えたいものです。
とはいえ、性教育が学校で充分に行われていないのが日本の現状なので、書籍の力を借りることがいいのではないでしょうか。
子どもの目につくところに書籍をそっと置いておくのもいいかもしれません。
※監修者は以下で紹介する商品について、選定や紹介文の監修は行っておりません。
※紹介商品は、上記記事内で記載した効果・効能を保証するものではありません。ご購入にあたっては、各商品に記載されている説明文をご確認ください。
商品名 | 画像 | 詳細を見る | 対象年齢 |
エイデル研究所あっ!そうなんだ!わたしのからだ | 幼児期(1 歳~6 歳ごろ) | ||
子どもの未来社はじめにきいてね、こちょこちょモンキー! 同意と境界、はじめの1歩 | 幼児期(1 歳~6 歳ごろ) | ||
童心社からだっていいな | 幼児期(1 歳~6 歳ごろ) | ||
エイデル研究所あっ!そうなんだ!性と生 幼児・小学生そしておとなへ | 児童期(7~10 歳ごろ) | ||
子どもの未来社からだのきもち 境界・同意・尊重ってなに? | 児童期(7~10 歳ごろ) | ||
大月書店いえるよ!NO わたしらしく生きるための大切なことば | 児童期(7~10 歳ごろ) | ||
新日本出版社『こころとからだの不安によりそう 性ってなんだろう?』全5巻 | 思春期(11~18 歳ごろ) | ||
大月書店『人間と性の絵本』全5巻 | 思春期(11~18 歳ごろ) | ||
KADOKAWAおうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方 | 親世代 | ||
KADOKAWAおうち性教育はじめます 思春期と家族編 | 親世代 | ||
朝日新聞出版親子で話そう!性教育 | 親世代 | ||
エイデル研究所性のおはなしQ&A 幼児・学童に伝えたい30のこと | 親世代 | ||
小学館パンでわかる包括的性教育 入学前までにやっておきたい!将来のための30のこと | 親世代 |
幼児期に伝えたい性についてのテーマを14に絞って、絵本編と解説編の2部構成で紹介。
1テーマごとに完結するように作られているため、子どもが興味を持ったテーマから読み進められます。
子どもと一緒に大人も学べる一冊。
いつもみんなをくすぐっては笑わせていたこちょこちょモンキーですが、ある日お友だちに「くすぐらないで!」と言われてしまいます。
みんなの意見を聞き、こちょこちょモンキーが出した答えとは…?
人間関係の基本となる「同意」について、小さな子ども向けに優しく伝えています。
詩的な文と輝くような絵で、体の素晴らしさを伝える絵本。
性教育のベースとなる、命や体の大切さについて知ることができます。
「よい絵本」「第3回日本絵本賞」受賞。
子どもの成長発達に欠かせない“性の学び”について取り上げています。
絵本編では「からだ」「いのち」「ジェンダー」など21のテーマで、子どもにも分かりやすく紹介。
解説編では大人向けに、絵本編で取り上げたテーマで補足するとよいことや、子どもへの配慮のあり方についてまとめられています。
「境界・同意・尊重」について、子どもにとって身近な例を通じて伝える児童書。
パーソナルスペースの大切さや、人権について学ぶことができます。
巻末に、子どもと話し合うためのヒント集付き。
自分自身を守り、一人ひとりの尊厳を尊重するための「ノー」。
「ノー」と伝えることで、「境界線(バウンダリー)」を守ることを優しく教えてくれます。
「ノー」を言いにくい傾向があるとされる、日本の大人にも読んでほしい一冊。
自分自身の体、生殖、成長に伴う体の変化、ジェンダーなど、「性」と「生」にまつわるテーマを取り上げた5冊の本。
国際基準の包括的性教育をベースに、性の多様性についても解説します。
性被害やトラブルに巻き込まれた際の相談場所も紹介。
人間と性、心と体の仕組みについて、全5巻で紹介。
ユネスコ編「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に基づき、丁寧な図解イラストで正確な情報を提供してくれます。
例えば3巻は思春期がテーマで、月経や射精、性的いじめなど、よくある子どもの疑問や質問にも説明。
家庭での性教育への取り組み方をマンガで解説したベストセラー。
性教育を始めるタイミングや、思春期以前の子どもへの教え方などのポイントを分かりやすく紹介してくれます。
子どもを守るために読んでおきたい、親のための性教育入門書。
ユーザーのレコメンド※編集部収集コメント
30代・女性
漫画形式なのですらすらと読めました。
いまの悩み事に合ったことがQ&A方式で書かれていて参考になりました。
きちんとした性教育を受けずに大人になった身としては、目から鱗な発見が多くあり、自分の意識を変えるきっかけになりました。
子どもがもう少し大きくなったら、「思春期と家族編」も読んでみたいです!
思春期以降の子どもに伝えたい、家庭での性教育についてまとめた一冊。
第一弾と同様マンガ形式なので、書籍を読み慣れない人も手に取りやすいでしょう。
思春期を迎えた子どもとの距離の取り方についても解説。
子どもを性被害から守るために親が知りたい情報が詰まった一冊。
身近な例を挙げながら、分かりやすく紹介しています。
現代だからこそ教えたい、メディアリテラシーについても解説。
主に幼児期・学童期における性に関わるテーマをQ&Aで紹介。
第Ⅱ部では、理論編として性教育の大切さや現代の性教育の考え方について、親のとるべき姿勢についても解説してあります。
ユネスコ「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」の翻訳者である浅井春夫さんが監修した一冊。
家庭で初めて性教育に取り組む人が押さえておきたいポイントを、パンになぞらえながら30の項目で解説しています。
親として、どう取り組めばいいか迷ってしまうことの多い性教育。
自分のからだは自分のものであることを伝え、子どもも一人の人として日常から接するように意識することが、性教育のはじめの一歩といえるでしょう。
それでも悩んだ時は、親子で書籍を手に取ってみるのもいいかもしれませんよ。
和光幼稚園では5歳児に「からだのはなし」、和光小学校では「からだ・こころ・いのちの学習」と題し、『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』に基づいた授業を行っています。特に小学校では学年ごとにカリキュラムを組み、自分の体を知ることや生命の誕生、ジェンダー、思春期のからだとこころ、身の回りにある性の問題、自分たちがどう生きたいかなど、子どもの成長に合わせて授業を行い、考える時間を設けています。